見出し画像

仕方がないので、もう少し付き合います

これはまだ、元号が平成の時代の時に起きた、母とのエピソードです。

私は4人姉弟の末っ子で、一番上の姉とは15年も歳が離れています。そして母が私を出産したのは、40になる歳でした。

私は姉弟の中で、最も長く母と一緒に暮らしていました

上の3人は高校卒業後まもなく独り立ちをした中、私だけが大学卒業までの間、実家でお世話になっていました。

父は健在ですが、仕事の関係で月に1~2日しか帰ってこなかったので、高校生頃からはほとんど母と二人暮らしをしているという感覚で過ごしていたのを覚えています。

そんな母はというと、面倒くさがりでおしゃべり好きな人です。

一向にスマホの使い方を覚えようとせず、夕食に流れるバラエティ番組を見てはその内容に口を出しています。

やかましいことこの上ないのですが、そんな母が涙を見せたのは母の還暦祝いのときでした。

お祝いのプレゼントは、姉弟で相談してお金を出し合って買ったドライフラワーのブーケと、赤いちゃんちゃんこを着たクマのぬいぐるみ。

当時母と一緒に暮らしていた私が渡す役目を担い、誕生日当日、私は母へ感謝のメッセージを伝えました。

少しだけ、抜粋します。

「…人前で平気でおならをするとか、そんなお母さんを恥ずかしいと思うこともあります。

けれども今、私が一緒に暮らして、勉強をさせてもらえるのはやっぱり、お母さんが大学入学を反対しなかったおかげです。

二十歳になった私からのメッセージです。

うるさくて、やかましくて、うっとうしいと思うこともいっぱいあるけれど、私は、マイペースで変わらない、そんなお母さんが大好きです。」

母は今、実質一人暮らしをしています。

たまに帰ると、久しぶりに友達と旅行に行っただの、あの芸能人のスキャンダルがどうだのと、当時と変わらない他愛のない話を嬉しそうに私にします。

仕方ない、もう少し付き合ってあげることにしようかな。